外国人介護職員への介護記録の指導では、「日本語を直しているうちに、何を伝えたい記録なのか分からなくなる」「担当者によって教え方が違う」といった悩みが生まれます。まず記録に必要な情報をそろえ、その後に表現を整えると、本人も指導者も確認しやすくなります。
この記事では、介護施設の教育担当者向けに、外国人介護職員への介護記録の教え方を5段階で紹介します。練習例は架空の場面です。実際の記録では、施設の様式や記載・確認の手順に合わせて活用してください。
記録指導を採用後の育成計画に組み込む際は、中部ケアの日本語学習・毎週の勉強会もご確認ください。制度選びから教育体制までの相談は、介護施設向けの採用・受け入れ案内から進められます。
1.外国人介護職員への介護記録指導は、様式の確認から始める
書き始める前に、いつ、どの欄に、何を書くのかを示しましょう。用紙の書き方と、記録システムの操作を一度に教える必要はありません。操作と文章の練習を分けると、どこで困っているのかを確かめやすくなります。
- 記録する時間や場面、入力する欄を示す
- 施設で使う用語や略語の意味を説明する
- 記入後に確認を依頼する相手を伝える
- 訂正する場合の手順を施設のルールで説明する
「この欄は利用者さんの言葉を書きます」「この欄は職員が行ったことを書きます」のように、欄の役割を短く伝えます。正式な記録に進む前に、利用者の情報を含まない練習用の用紙や環境を用意しましょう。
2.書く前に、時刻・場面・言葉・対応を整理する
最初から長い文章を求めず、本人が見たことや聞いたことを、短いメモで整理します。次の問いは練習用の例です。必要な項目は、施設の記録目的や様式に合わせて増減してください。
- いつ:何時ごろの出来事か
- どこで・何をしていたとき:場面や活動は何か
- 何を確認したか:見た様子や、本人から聞いた言葉は何か
- 何をしたか:職員が行った対応は何か
- その後:対応後に確認した様子は何か
「元気だった」「楽しそうだった」だけでは、読み手が状況を思い浮かべにくくなります。「どんな言葉がありましたか」「どんな動きを見ましたか」と聞き、観察したことと本人の言葉を分けて整理しましょう。確認していない情報を補って書かせないことも大切です。
3.架空の場面で短い記録を作る
練習場面:14時、談話室で折り紙の活動を案内した。Aさんは「今日は見ていたい」と話した。職員が見学できる席を案内すると、Aさんは席に座り、活動を見学した。
練習用の記録例:「14時、談話室で折り紙の活動を案内。Aさんより『今日は見ていたい』との発言あり。見学できる席を案内し、着席後、活動を見学された。」
この例は、文章の組み立て方を学ぶためのものです。「本人の希望」「職員の対応」「その後の様子」がどの部分かを、本人と一緒に確認します。施設で異なる文体を使っている場合は、その書き方に合わせてください。
続けて、同じ内容を口頭でも説明してもらうと、文章の意味を理解して書けているかを確認できます。例文を暗記する練習だけで終わらせず、活動や本人の言葉を変えた架空の場面でも取り組みましょう。
4.添削は「情報」と「日本語表現」を分ける
指導者が全文を書き直すと、本人には修正の理由が伝わりにくくなります。最初に必要な情報がそろっているかを確認し、その後で、読み手に伝わる表現を一緒に考えましょう。
- 時刻や場面が分かるか
- 本人の言葉と、職員が確認したことが区別されているか
- 職員が行った対応と、その後の様子が分かるか
- 誰の行動なのか、主語が曖昧になっていないか
- 誤字や用語について、本人が意味を説明できるか
例えば「ここに時刻があると、次の担当者が流れを確認できます」と、直す理由も伝えます。すべての表現を一度に直すより、今回の練習で重点的に確認する項目を決める方法もあります。実際の記録の正確さは、施設の確認手順に沿って確保してください。
5.用語集と短い復習を日々の教育に組み込む
よく使う言葉は、「読み方」「意味」「使う場面」をセットにした用語集にすると復習しやすくなります。施設独自の略語は一般的な言葉とは限らないため、正式な意味と記録上の使い方を説明しましょう。
厚生労働省の「外国人介護人材の受入れについて」では、介護分野で働く外国人向けの学習用コンテンツ・テキストが紹介されています。「にほんごをまなぼう」などの教材を確認し、現場で出会った言葉の復習と組み合わせる方法があります。
学習時間は本人の状況と施設の教育計画に合わせて調整します。「今日は時刻と場面をそろえる」「次は対応後の様子を加える」のように、小さな目標を共有しましょう。
練習用記録の扱いも最初に決めておく
練習では架空の人物・場面を使うと、利用者の情報を持ち出さずに文章の指導ができます。実際の記録を教材にする場合は、施設の情報管理ルールに従い、閲覧できる範囲や保存先、廃棄方法を確認してください。
利用者の氏名や状態などを、施設が認めていない翻訳サービスや生成AIへ入力することは避けます。翻訳や文章支援を使う場合も、施設が認めた方法で行い、出力と実際の出来事が一致しているかを担当者が確認しましょう。
教育担当者用の確認チェックリスト
- 施設の記録様式と記入・訂正・確認の手順を説明したか
- 操作の練習と文章の練習を分けられているか
- 本人が見た事実や聞いた言葉を、書く前に整理できたか
- 修正の理由を伝え、本人の理解を確認したか
- 次の練習目標と確認担当者を決めたか
教え方を担当者間で共有すると、本人が異なる指示に戸惑う場面を減らしやすくなります。受け入れ直後の説明項目は、外国人介護人材の受け入れ初日チェックリストも参考にしてください。
よくある質問
日本語の誤りはすべて直すべきですか?
練習では、情報の不足や意味が変わる表現を先に確認し、重点項目を決めて指導する方法があります。正式な記録については、必要な正確さを保つため、施設の確認手順に従って修正してください。
会話はできるのに、記録を書くと時間がかかります
場面の整理、語彙、文章作成、入力操作のどこで時間がかかるかを分けて確認しましょう。まず口頭で説明し、短いメモを作ってから文章にするなど、段階を小さくして練習できます。
記録指導を受け入れ後の育成計画につなげよう
外国人介護職員への介護記録の教え方は、様式の確認、情報の整理、架空の場面での練習、理由を伝える添削、用語の復習という流れで整理できます。本人の日本語力だけに課題を置かず、施設の用語や指導方法も共有しましょう。
採用前に学習希望を把握する際は、外国人介護人材の面接で確認したいポイントもご覧ください。中部ケア協同組合へのご相談は、お問い合わせフォームからお寄せください。
参考:厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(学習用コンテンツ・テキスト、確認日:2026年10月18日)。指導手順、練習例、チェックリストは本記事の実務上の提案です。


